看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは|医療依存が高くても在宅を続ける選択肢

「経管栄養」「在宅酸素」「痰の吸引」「末期がんの看取り」。医療依存度が高い親を自宅で介護するのは、家族にとって大きなプレッシャーです。特別養護老人ホームは空きがなく、有料老人ホームは費用が高い。そんなとき、ぜひ知ってほしい選択肢が「看護小規模多機能型居宅介護(看多機・かんたき)」です。在宅を続けながら、医療と介護を一体で受けられる公的サービスです。この記事では、看多機の仕組み、対象者、費用を家族向けに丁寧に解説します。

看多機とは|4つのサービスを1契約で受けられる

看護小規模多機能型居宅介護(通称: 看多機、かんたき)は、「通い・訪問介護・訪問看護・泊まり」の4つの在宅サービスを、同じ事業所から一体的に受けられる地域密着型サービスです。

特徴は次のとおりです。

  • 介護保険適用、月額定額制(1〜3割負担)
  • 医療依存度が高い人でも受け入れ可能
  • 訪問看護が組み込まれているため、医療処置が必要でも安心
  • 同じ事業所のスタッフが対応するので関係づくりが1回で済む
  • 定員: 通いは15名以下、泊まりは9名以下(少人数)

2012年に創設された比較的新しいサービスで、全国に約900ヶ所(2025年時点)と数は少ないものの、医療依存のある在宅介護で注目されています。

似たサービス「小規模多機能」との違い

看多機とよく混同されるのが「小規模多機能型居宅介護(小多機・しょうたき)」です。違いは1点、訪問看護があるかどうかです。

項目 小規模多機能(小多機) 看護小規模多機能(看多機)
サービス 通い・訪問介護・泊まり 通い・訪問介護・訪問看護・泊まり
医療ケア 原則なし あり(点滴、喀痰吸引、経管栄養など)
看護師の配置 1名以上 常勤の看護師を中心に複数配置
費用(要介護3、1割負担、月額) 約2万2,000円 約2万6,000円
対応できる状態 中程度の介護 医療依存が高くても可

医療処置が必要なら看多機、そうでなければ小多機が基本です。

4つのサービスの使い方

看多機は4つのサービスを、本人の状態に応じて柔軟に組み合わせます。

1. 通い(デイサービス機能)

事業所に日帰りで通い、食事・入浴・レクリエーション・機能訓練を受けます。週3〜5回が一般的。

2. 訪問介護

自宅にスタッフが来て、身体介護や生活援助を行います。朝夕の短時間訪問も可能。

3. 訪問看護

看護師が自宅に来て、医療処置、健康管理、服薬指導を行います。

  • バイタルチェック、服薬管理
  • 褥瘡処置、創傷ケア
  • 点滴、注射
  • 喀痰吸引、経管栄養管理
  • 人工呼吸器、在宅酸素の管理
  • 看取り期の対応

4. 泊まり(ショートステイ機能)

家族の休息や急な事情のとき、数日〜1週間の短期宿泊。定員9名以下で落ち着いた環境。

対象者|どんな人が看多機に向くか

看多機は次のような人に特に向いています。

  • 退院直後で医療処置が継続する人(点滴、経管栄養など)
  • 末期がんで在宅看取りを希望する人
  • 神経難病(ALS、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症など)
  • 認知症で医療管理も必要な人
  • 人工呼吸器、気管切開、在宅酸素など医療機器を使う人
  • 家族の介護力に不安がある重度介護の人

要介護1〜5が対象。要支援1・2は利用不可です。

具体例|Jさん(56歳)が末期がんの母を看多機で支えたケース

福岡県のJさんの母(78歳、要介護4)は膵臓がんの末期。病院から「自宅に戻りたい」と希望され、看多機を利用。週3回の通い、週4回の訪問看護で点滴と疼痛管理を継続。家族の介護疲れが溜まったときは3日間の泊まりを柔軟に組み込み、最期の2週間は24時間の訪問看護と訪問介護で自宅看取りを実現。「1つの事業所で医療も介護も完結。顔なじみのスタッフに囲まれて母は穏やかに逝った」とJさん。

費用|月額定額制の安心感

看多機は月額定額制です。どれだけサービスを使っても(支給限度額内であれば)金額が変わりません。

月額費用(2026年基準、1割負担)

要介護度 月額介護保険費用
要介護1 約1万2,438円
要介護2 約1万7,403円
要介護3 約2万4,464円
要介護4 約2万7,747円
要介護5 約3万1,386円

これに加えて、食費(1食500〜800円)、宿泊費(1泊2,000〜4,000円)、日用品費などが実費となります。要介護5で毎日のように通い・訪問・泊まりを使っても、介護保険費用は3万1,386円で収まる計算です。

費用のメリット

  • 定額なのでサービス追加しても費用が増えない
  • 家族の介護力次第で使う量を柔軟に調整できる
  • 訪問看護を別契約する必要がない

要介護4〜5の医療依存層にとっては、費用対効果が非常に高いサービスです。

看多機を利用するには

地域密着型サービスのため、原住所地の市区町村の事業所しか利用できません(例: 横浜市民は横浜市内の看多機のみ)。

利用の流れ

  1. ケアマネ・地域包括支援センターに相談
  2. 看多機事業所を紹介してもらう(自治体HPにも一覧あり)
  3. 事業所へ見学・体験利用
  4. 契約(看多機は従来のケアプランから看多機事業所のケアマネに引き継ぎ)
  5. 利用開始

注意点は、看多機は事業所所属のケアマネが担当するため、これまで付き合っていた居宅介護支援事業所のケアマネから引き継ぎになる点です。事前に相談・合意が必要です。

看多機のメリット・デメリット

メリット

  • 医療と介護が1ヶ所に集約、連携がスムーズ
  • 月額定額、使うほどお得
  • 顔なじみのスタッフが通い・訪問・泊まりを担当
  • 看取り期の柔軟な対応
  • 家族のレスパイトに強い(急な泊まりも受けやすい)

デメリット

  • 全国に約900ヶ所と数が少ない、地域差が大きい
  • ケアマネが事業所所属に変更になる
  • 他の訪問看護・訪問介護事業所との併用ができない
  • 定員が少ないため希望時に空きがないことも

看多機が合う家族・合わない家族

合う家族

  • 医療依存の親を自宅で看たいが、家族の負担が心配
  • 末期がんで在宅看取りを希望
  • 兄弟で遠距離介護、24時間体制のバックアップが必要
  • 退院後に複数の訪問系サービスを調整する余力がない

合わない家族

  • 医療処置が不要な軽度介護(小多機または通常の在宅サービスで十分)
  • 既に信頼できる居宅ケアマネと訪問看護ステーションがあり、切り替えに抵抗がある
  • 住所地に看多機事業所がない

看多機を探すコツ

全国に数が少ないため、早めに情報収集するのが鉄則です。

  • 市区町村の介護保険課・地域包括支援センターに問い合わせ
  • 都道府県の「地域密着型サービス事業所一覧」を確認
  • 退院調整看護師に相談(病院の地域連携室)
  • ケアナギのような比較サイトで事業所情報を確認

退院が決まった段階で動けば、数週間の待機時間を短縮できます。

よくある質問

  • Q. 看多機と訪問看護ステーションの併用は可能? A. 原則不可。看多機契約中は、その事業所の訪問看護のみ利用。
  • Q. 看取り加算はある? A. あります。死亡日から30日以内の看取り介護加算で、最期まで手厚い対応が受けられます。
  • Q. 要介護認定が出る前でも契約できる? A. 認定が必要です。暫定ケアプランでの利用は事業所に要相談。

看多機は「医療が必要でも、家で過ごしたい」を現実的に可能にする制度です。まだ知名度が低いため、ケアマネから案内されないこともあります。医療依存の家族がいるなら、自分から「看多機は使えますか?」と聞いてみてください。

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