サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の7つのデメリット|後悔しない選び方
「月額が安そうだからサ高住に決めた」「バリアフリーで見た目がきれいだったから」——こうした理由だけでサ高住(サービス付き高齢者向け住宅、高齢者住まい法に基づく自立〜軽度要介護者向けのバリアフリー賃貸住宅)を選び、入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースは少なくありません。
サ高住は賃貸住宅であり、介護施設ではありません。この本質を見落とすと、費用面・ケア面の両方でトラブルが起きます。ケアナギ編集部が、家族目線で押さえておくべき7つのデメリットと、後悔しないためのチェックポイントを整理しました。
そもそもサ高住とは(簡単な復習)
サ高住は2011年の高齢者住まい法(正式名称:高齢者の居住の安定確保に関する法律)改正で制度化された、60歳以上または要介護認定を受けた高齢者向けのバリアフリー賃貸住宅です。全国に約29万戸(2026年3月時点)あり、月額13〜25万円程度で、安否確認と生活相談を必須サービスとして提供します。全国の登録施設はサービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(国交省)で検索可能です。
有料老人ホームと大きく違うのは、介護サービスは原則として別契約(外部の訪問介護などを利用)という点です。施設内に介護職員が常駐しているわけではありません。
デメリット1|介護サービスは基本「別料金」
サ高住の月額表記には、介護サービス費用が含まれていないケースが大半です。一般型サ高住(最多のタイプ)では、介護が必要になった時点で以下を別契約する必要があります。
- 訪問介護:1回数百円〜数千円(介護保険自己負担1〜3割)
- デイサービス(通所介護、日中施設に通ってサービスを受ける形態):1日数百円〜
- 訪問看護:医師の指示書がある場合のみ
例:基本月額16万円のサ高住に要介護3の方が入居すると、訪問介護代だけで月3〜5万円追加になり、実質月額20万円超になる例が珍しくありません。
「月額16万円で入れる」と説明を受けても、介護保険の区分支給限度額(介護保険で利用できる1ヶ月あたりの上限額)を超えた分は全額自費になるため、見学時に「要介護3になったら月額はいくらになるか」を必ず試算させることが重要です。
デメリット2|夜間に介護職員が常駐しない施設が多い
一般型サ高住は、夜間は警備員または緊急通報装置のみという施設が一般的です。夜間にトイレで転倒した、発熱したといった場合、対応までに30分以上かかることもあります。
夜間対応が必要な方は、以下を検討してください。
- 特定施設入居者生活介護(介護保険サ高住):24時間介護職員常駐で有料老人ホームに近いサービス水準
- 介護付き有料老人ホーム:夜勤の介護職員が常駐
- 夜間訪問介護の併用:一般型サ高住でも追加契約可能だが割高
契約前に「夜22時〜朝7時の間に体調不良になったら、何分で誰が対応するか」を具体的に聞いてください。
デメリット3|医療依存度が高くなると退去を求められる
サ高住は医療機関ではないため、医療依存度が上がると契約解除を求められる可能性があります。典型的な「退去促進事由」は以下です。
- 喀痰吸引(たんを機械で吸引する医療行為、要医療スタッフ)が頻回に必要
- 経管栄養(胃ろう・鼻腔栄養、口から食べられなくなった際の栄養補給方法)への移行
- インスリン自己注射が困難
- 酸素療法が24時間必要
- 褥瘡(じょくそう、床ずれ)処置の医療管理が継続
入居時に「看護師常駐」「医療連携」とうたっていても、常駐ではなく週数回の訪問看護だけというケースもあります。契約書の「退去要件」欄を必ず確認し、入居後に状態が悪化した場合の対応(他施設への紹介・転居支援)もチェックしてください。
デメリット4|認知症の進行で退去になるリスク
認知症の周辺症状(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、徘徊・暴言・不潔行為などの行動・心理症状)が重度化すると、一般型サ高住では対応困難として退去を求められる例が多数あります。
特に以下の症状がある場合は、認知症対応の専門施設を優先検討してください。
- 離設(施設を無断で出てしまう徘徊)リスク
- 他の入居者への迷惑行為(大声・暴力)
- 不潔行為(排泄物をいじる等)
対応が可能な選択肢:
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症の方が9人以下の少人数で共同生活
- 特別養護老人ホーム(特養)の認知症専門棟:ユニットケア(10人前後の少人数で個別ケアを提供する特養の方式)
- 介護医療院:医療依存度が高い認知症にも対応
デメリット5|月額以外の「隠れ費用」がある
サ高住の契約書を隅々まで確認すると、月額表記以外に以下の費用が発生する場合があります。
- 敷金:月額の2〜3ヶ月分(退去時に一部または全額戻るが、原状回復費で相殺される例も)
- 賃貸借契約の保証会社費用:初回月額の50〜100%
- 水道光熱費:月1〜2万円(オール電化の場合さらに高い)
- 食事代:1食600〜1,200円(×3食×30日=5.4万〜10.8万円)
- 共用部管理費:月5,000〜15,000円
- 安否確認・生活相談以外のオプション:洗濯代行・買い物代行など個別課金
見学時に「月額総額の例」を、朝昼夕食を含んだ状態で試算してもらうことが鉄則です。
デメリット6|看取り対応は施設によって大きく差がある
サ高住での看取り(人生の最終段階でのケア、延命措置をせず自然経過を支える)対応は、施設により天と地ほど違います。
- 看取り対応型サ高住:訪問診療・訪問看護・24時間介護連携で最期まで居住可能(全体の約20%)
- 看取り不可型:終末期になると医療機関への搬送または他施設への転居が必要(全体の約50%)
- 部分対応型:積極的な延命はしないが、死亡時の対応に制限あり(全体の約30%)
「最期までここで暮らしたい」と希望する場合は、契約前に以下を確認してください。
- 看取り対応の実績件数(年間何名)
- 訪問診療医との連携体制(24時間対応か)
- 死亡時の対応(搬送せずそのまま葬儀業者を呼べるか)
- 家族の付き添い可否・宿泊可否
デメリット7|囲い込み(抱合せ販売)のリスク
一部のサ高住では、系列の訪問介護事業所・デイサービス事業所のみを利用させる「囲い込み」が問題になっています。本来、介護サービスは利用者が自由に選べるはずですが、以下のような実態があります。
- 系列以外のケアマネジャーを利用させない圧力
- 介護保険の区分支給限度額いっぱいまで系列事業所のサービスを使わせる
- 入居条件として「系列の訪問介護を利用すること」を暗に要求
見分け方:
- ケアマネが施設スタッフと兼務していないか
- 外部のデイサービス・訪問介護を自由に選べると明記されているか
- 家族が希望した外部ケアマネに変更できるか
気になる場合は、契約前に「外部ケアマネを自分で選びたい」と伝え、反応を見てください。嫌な顔をされる施設は要注意です。
契約前チェックリスト(保存推奨)
以下のチェックリストを印刷または撮影して、見学時に必ず確認してください。
- [ ] 要介護3になった場合の月額総額の試算を提示してもらった
- [ ] 夜間(22時〜7時)の対応方法と対応時間の目安を聞いた
- [ ] 医療依存度が上がった際の退去要件を契約書で確認した
- [ ] 認知症が進行した際の対応・転居支援体制を聞いた
- [ ] 食事代・光熱費・管理費込みの月額総額を出してもらった
- [ ] 看取り対応の実績件数と体制を聞いた
- [ ] 外部ケアマネ・外部介護事業所を自由に選べるか確認した
- [ ] 系列事業所との関係(資本・人員)を確認した
- [ ] 過去の退去理由トップ3を聞いた
- [ ] 家族として付き添い・宿泊できるか確認した
サ高住が向いている人・向いていない人
向いている人
- 現時点で自立または要支援・軽度要介護(要介護1〜2程度)
- 夫婦で一緒に住みたい(サ高住は夫婦入居可の施設が多い)
- 将来の医療依存度上昇リスクが低い
- 自宅に近い環境でのバリアフリー生活を重視
- 経済的に余裕があり、介護費用の追加を許容できる
向いていない人
- 要介護3以上でフルタイムの介護が必要
- 認知症の周辺症状(BPSD)が出始めている
- 月額費用を固定で抑えたい(介護付き有料老人ホームの方が総額予測しやすい)
- 看取りまで同じ施設で過ごしたい
- 医療依存度が高い(喀痰吸引・経管栄養など)
よくある質問(FAQ)
Q. サ高住と有料老人ホームはどう違う?
サ高住は賃貸住宅で介護は別契約、有料老人ホーム(特に介護付き)は介護サービスが含まれた施設です。要介護度が上がった後は、介護付き有料老人ホームの方が総額が予測しやすく安心です。
Q. 月額が安いサ高住は本当に得?
基本月額だけ見て判断すると危険です。介護費用・食事・光熱費を含めた実質月額で比較してください。要介護3以上の方だと、介護付き有料老人ホームと変わらない、あるいはサ高住のほうが高くなるケースもあります。
Q. サ高住から他の施設への転居は難しい?
サ高住は賃貸契約のため転居自体はしやすいですが、体調悪化時の転居先確保が難題です。特養は待機が長く、介護付き有料老人ホームは空きが少ない。入居前から「次の選択肢」を想定しておくことが重要です。
Q. 生活保護でもサ高住に入れる?
家賃が住宅扶助の上限(地域により5〜8万円)以内の施設なら可能ですが、選択肢は限られます。生活保護受給者向けの情報は生活保護受給者が入れる老人ホームもご参照ください。
ケアナギ編集部コメント
サ高住は「安くて自由度が高い」という触れ込みで広く普及しましたが、実態は「賃貸住宅」であり、介護が必要になった後の見通しを立てないまま選ぶと家族全員が疲弊します。
特に注意したいのは、パンフレットの「介護対応」という言葉です。「介護対応型」と「介護付き」は別物です。介護付きは特定施設入居者生活介護の指定を受けていて介護サービスが含まれますが、「介護対応」は外部契約で対応可能という意味に過ぎません。
ケアナギ編集部としては、要介護3以上の方、または認知症が出始めている方には、介護付き有料老人ホームまたは特養を優先検討することを推奨します。サ高住は「自立度が高い時期のバリアフリー住居」として選ぶには良い選択肢ですが、最期まで過ごすつもりで選ぶ施設ではないことを理解したうえで決めてください。
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