入居を断られた後の対処法|拒否理由別の再挑戦ガイド

「胃ろうがあるからうちでは対応できません」「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、行動・心理症状、徘徊・暴言・不穏・妄想などの周辺症状)が強いので他を当たってください」「身元保証人(入居契約時に費用支払い保証や緊急連絡先となる人、家族がなることが多い)がいないと受け入れできません」——見学して話がまとまりかけていたのに、最後で断られた。このとき、家族が感じる絶望感とやるせなさは本当に大きいものです。

でも、「断られた=どこにも入れない」ではありません。拒否理由には必ず背景があり、理由別に対応ルートが存在します。ケアナギ編集部が、家族目線で再挑戦のガイドを整理しました。

施設が入居を断る主な理由は4つ

老人ホームが入居審査で断る理由は、大きく次の4カテゴリです。

カテゴリ具体例割合の目安
医療依存度が高い胃ろう・吸引・インスリン注射・人工透析・酸素療法・褥瘡処置約40%
[認知症](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html)のBPSD(行動・心理症状)徘徊・暴力・暴言・不潔行為・異食・昼夜逆転約30%
経済的理由月額費用の支払い能力不足、[生活保護](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html)受給で非対応施設約15%
保証人・身元引受人なし独居高齢者、家族断絶、子がいない約15%

それぞれに、受け入れ可能な施設タイプと再挑戦ルートが存在します。

理由1|医療依存度で断られた場合の再挑戦ルート

「24時間看護師配置がない」「たんの吸引ができる職員がいない」といった理由での拒否は、施設を選び直すことで解決します。

医療対応に強い施設タイプ

  • 介護医療院:長期療養と生活の場を兼ねる医療提供施設。胃ろう・吸引・看取りまで対応
  • 介護老人保健施設(老健):医師常勤、看護体制が手厚い。在宅復帰重視だが長期利用も可
  • 看護小規模多機能型居宅介護(看多機):医療ニーズのある在宅介護向けだが、短期入所で繋ぐことも
  • ナーシングホーム型有料老人ホーム:看護師24時間配置の有料老人ホーム。月額20〜40万円台
  • 特別養護老人ホームのうち看取り加算取得施設:医療対応を強化した特養

具体的な行動

  1. かかりつけ医・訪問看護に「この医療処置を対応できる施設タイプ」を聞く
  2. 地域包括支援センターで「看護配置24時間」「喀痰吸引可」などで絞り込んだリストを入手
  3. 見学前に電話で「胃ろう○○mL/日、吸引△回/日、インスリン□単位」と具体数字を伝えて受け入れ可否を確認

見学に行ってから断られるのを避けるには、電話で具体的な医療ニーズを伝えて事前審査してもらうのが鉄則です。

理由2|認知症BPSDで断られた場合の再挑戦ルート

「他の入居者に危害を加えるリスクがある」「夜間の徘徊に対応できない」という理由の拒否は、症状に応じた専門施設に切り替えることで解決します。

BPSD対応に強い施設タイプ

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム:9人以下の少人数ユニットケア、認知症に特化
  • 介護医療院・精神科病院併設施設:激しいBPSDには医療連携が必須
  • 認知症専門棟のある特養・有料老人ホーム:大規模施設でも認知症フロア分けをしている施設あり
  • 精神科病院からの地域移行先:急性期治療後、薬剤調整で落ち着いたタイミングで受け入れる施設

症状別の考え方

  • 徘徊:ドアロック・GPS対応・見守りセンサーがあるグループホームまたは特養
  • 暴力・暴言:薬剤調整で症状緩和後に再申込。主治医と相談してクロザピン・抑肝散などの治療を
  • 不潔行為:24時間見守りと排泄ケア重視の施設。認知症専門棟が適応
  • 異食:個別対応が厚いグループホームまたは介護医療院

短期間の精神科入院でBPSDを安定化させてから、再度施設申込をするという手順も一般的です。抑肝散や少量の抗精神病薬で症状が落ち着くケースも多く、「今の状態」で無理と言われても、治療後に受け入れ可能になることはよくあります。

理由3|経済的理由で断られた場合の再挑戦ルート

月額費用を払えない、生活保護受給という理由の拒否は、制度を使い切ってから施設タイプを切り替えることで解決します。

制度を使い切る

  • 高額介護サービス費(1ヶ月の自己負担が一定額を超えた場合に超過分が戻る制度、上限は所得により15,000〜140,100円)で月の上限を44,400円に(住民税課税世帯の場合)
  • 特定入所者介護サービス費(補足給付、低所得者の食費・居住費を国が軽減する制度)で特養・老健の居住費・食費を軽減
  • 世帯分離で低所得区分へ
  • 社会福祉法人の利用者負担軽減事業を申請

経済的にハードルが低い施設タイプ

  • 特別養護老人ホーム:月8〜15万円。補足給付(正式名称「特定入所者介護サービス費」、低所得者の食費・居住費を国が軽減する制度)で低所得者は大幅軽減
  • 養護老人ホーム:所得の低い高齢者向け措置施設。月額5〜10万円程度
  • 生活保護対応有料老人ホーム:住宅扶助の範囲内で運営
  • 無料低額宿泊所:自治体によっては介護対応
  • ケアハウス(軽費老人ホーム):所得に応じた費用、月8〜15万円

「入居一時金ゼロ・月15万円以下」の施設は全国にあります。地域包括支援センターか福祉事務所に「予算○万円で入れる施設」で相談してください。費用面の詳細は費用が払えないときの対処法もご参照ください。

理由4|保証人・身元引受人がいない場合の再挑戦ルート

「身元保証人がいないと入居できません」は、多くの施設で慣例化しています。しかし、厚生労働省は「身元保証人がいないことを理由に入居を拒否してはならない」と2018年に通知を出しています。諦めるのは早いです。

身元保証の代替手段

  • 成年後見制度(認知症等で判断能力が低下した人の財産・契約を法的に代行する制度、法定後見と任意後見の2種類):判断能力が低下している方は、法定後見人が契約・金銭管理を代行
  • 任意後見:判断能力があるうちに、信頼できる人に将来の後見を依頼
  • 身元保証会社の利用:月額5千〜2万円程度で保証を請け負う民間サービス
  • 社会福祉協議会の日常生活自立支援事業:金銭管理・契約サポート(判断能力が一部低下した方向け)
  • NPO・一般社団法人の身元保証サービス:営利企業より低価格で対応

保証人不要を謳う施設を探す

「身元保証人不要」「身寄りなし対応」と明記している施設は全国で増えています。特に特養・養護老人ホーム・一部の有料老人ホームが対応します。見学前に電話で「保証人がいないのですが受け入れ可能ですか」と確認してください。

渋るような口ぶりの施設は、入居後のトラブル対応でも不安が残ります。最初から歓迎してくれる施設を選ぶのが結果的に安心です。

再挑戦の具体ステップ

断られたあと、何から始めるべきか。5つのステップにまとめました。

  1. 拒否理由を正確に把握する:「なぜ断られたのか」を施設に丁寧に聞く。医療・認知症・経済・保証人のどれか、または複合か
  2. 主治医・ケアマネに共有する:医療処置の削減、薬剤調整、経済制度の使い切りなど、事前に対応できることを検討
  3. 施設タイプを切り替える:有料老人ホーム→グループホーム、サ高住→介護医療院など、カテゴリ自体を見直す
  4. 電話で事前審査を依頼する:具体的な医療ニーズ・BPSDの程度・予算・保証人状況を伝え、書類審査まで進めてもらう
  5. 地域包括支援センターに再相談:家族だけで探すより、広域リストと地域の裏情報を持つ専門家に頼る

実例|3回断られた家族の再挑戦ストーリー

Bさん(88歳・要介護5・胃ろう・認知症重度、関東某市)

  • 1回目:大手有料老人ホーム → 胃ろう対応が昼間のみで断られ
  • 2回目:近隣の住宅型有料 → 認知症BPSD(夜間徘徊様症状)で断られ
  • 3回目:グループホーム → 胃ろう対応不可で断られ

家族が地域包括支援センター(市区町村が設置する介護・福祉の総合相談窓口、無料で利用可能)に相談し、ケアマネと一緒に条件整理。結果、「看護24時間・胃ろう対応・認知症専門棟あり」の介護医療院を見つけ、電話で事前審査→見学→入居まで2ヶ月で完了。

ポイントは、3回断られた時点で「施設タイプを根本的に変えた」ことです。有料老人ホームに固執せず、介護医療院という医療色の強い選択肢に切り替えたことで突破できました。

「断られた家族」に伝えたいこと

入居を断られると、「親を大切にしていないのでは」「自分たちの努力が足りないのでは」と、自分を責める気持ちが湧きます。それは、あなたが親のことを真剣に考えているからこそです。

でも、施設が断るのは施設側の事情であって、あなたの責任ではありません。医療ニーズ・BPSD・経済状況・保証人の有無、どれも現代の日本では珍しくない課題で、対応する仕組みはすでに社会に用意されています。

一人で抱えず、地域包括支援センター・ケアマネジャー・主治医・福祉事務所を巻き込んでください。道は必ずあります。

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