エンディングノートの書き方(本人向け)|迷わず書ける10の項目

エンディングノートを買ったものの「どこから書けばいいか分からない」と、机の引き出しで眠らせていませんか。書店には数百種類のエンディングノートが並び、中には100項目以上の記入欄があるものも。全部埋めようとすると挫折するのが当然です。

本記事は、家族が本当に困る10項目に絞った書き方ガイドです。すべて埋めれば最低限の役割を果たし、残された家族が迷わず動けるようになります。書き始めるのに遅すぎるということはありません。まずは10項目から、気負わず始めてみてください。

エンディングノートとは何か

エンディングノート法的効力のない個人的な記録ノートです。遺言書とは異なり、相続の指定はできませんが、以下のような家族が「困ること」を事前に書き残せます。

  • 本人の基本情報(保険証番号、マイナンバー、年金番号など)
  • 財産の所在(銀行口座、証券、不動産、保険)
  • 医療・介護の希望
  • 葬儀・お墓の希望
  • 家族へのメッセージ

法的効力がないからこそ、気軽に書き始められ、何度でも書き直せるのが強みです。

書き進める3つのコツ

コツ1: 完璧を目指さない

空欄があっても構いません。書ける項目から順に埋め、書きにくい項目は後回しで大丈夫です。

コツ2: 鉛筆またはフリクションで書く

人生の状況は変化します。訂正しやすい筆記具を使い、気になったときに気軽に更新できるようにします。

コツ3: 保管場所を家族に伝える

どんなに詳しく書いても、家族が見つけられなければ意味がありません。書き始めたら必ず「○○の引き出しに置いてある」と家族に伝えてください。

迷わず書ける10項目

項目1: 基本情報

以下を記入します。家族が役所や金融機関で手続きする際、ほぼすべてに必要な情報です。

  • 氏名(戸籍通り)、生年月日
  • 本籍地、住民票所在地
  • マイナンバー
  • 健康保険証番号
  • 介護保険証番号(お持ちの方)
  • 年金番号(基礎年金番号・厚生年金)
  • 運転免許証番号、パスポート番号

項目2: 緊急連絡先

万一のとき、家族が連絡すべき相手のリスト。

  • 配偶者、子、兄弟の連絡先
  • 親しい親戚
  • 主治医、かかりつけ病院
  • ケアマネジャー、介護保険サービス事業所
  • 勤務先(在職中の場合)

項目3: 銀行口座・証券口座

すべての金融機関を漏れなく記入。支店名、口座種別、口座番号までセットで。

金融機関名支店名口座種別口座番号用途
例: ○○銀行××支店普通1234567年金振込・生活費

暗証番号は絶対に書かないでください。家族には通帳の保管場所を伝えるだけで十分です。

項目4: 保険契約

生命保険、医療保険、火災保険、自動車保険、個人年金など加入中の保険を一覧化。

  • 保険会社名
  • 証券番号
  • 契約者・被保険者・受取人
  • 保険金額、月額保険料
  • 証券の保管場所

項目5: 不動産・貴重品

  • 自宅の所在地、名義人、権利証の保管場所
  • 他に所有する不動産(土地、別荘、収益不動産)
  • 貸金庫の有無と所在
  • 美術品、貴金属、骨董品などの保管場所

項目6: デジタル資産・SNS

  • スマホ・PCのロック解除方法
  • メールアドレス(主要なもの)
  • SNSアカウント(LINE、Facebook、X、Instagram)
  • ネット銀行・ネット証券のログイン情報は別紙で厳重管理
  • 有料サブスクリプション一覧

パスワードは別紙またはノートの裏表紙にまとめ、書いた場所を家族に口頭で伝えます。

項目7: 医療の希望(リビング・ウィル)

  • 告知希望(がん告知を受けたいか)
  • 延命治療の希望(人工呼吸器、心臓マッサージ、輸血など)
  • 胃ろう・経管栄養の希望
  • 鎮静・緩和ケアの希望
  • 臓器提供・献体の意思

医療機関での判断に使われるため、できるだけ具体的に書いてください。

項目8: 介護の希望

  • 在宅介護 / 施設介護 のどちらを希望するか
  • 希望する施設タイプ(特養、有料老人ホームグループホームなど)
  • 介護を頼みたい人・頼みたくない人
  • 財産管理を任せたい人
  • ペットの引き取り手

項目9: 葬儀・お墓の希望

  • 葬儀形式(家族葬、一般葬、直葬など)
  • 宗派・菩提寺の情報
  • 戒名の要否
  • 葬儀社の希望(あれば)
  • 参列してほしい人・訃報を知らせたい人のリスト
  • 墓の所在地、承継者
  • 希望する埋葬形式(墓、樹木葬、永代供養、散骨など)

項目10: 家族へのメッセージ

最後は、感謝と希望の言葉を家族一人ひとりに残します。エンディングノートで家族が最も救われるのはこの項目だと、多くの遺族が証言しています。

  • 配偶者へ
  • 子ども一人ずつへ
  • 孫一人ずつへ
  • 大切な友人へ

堅苦しい文章である必要はありません。日常の感謝、思い出、これからの願いを自由に綴ってください。

エンディングノートと遺言書の使い分け

エンディングノートは情報記録、遺言書は相続指定。両方が揃って初めて機能します。

項目エンディングノート遺言書
法的効力なしあり
形式自由厳格(法定形式)
目的情報共有・希望表明相続の指定
書き直し自由正式な手続きが必要
費用ノート代のみ公正証書で3〜10万円

情報整理はエンディングノート、相続指定は遺言書。両方用意するのが理想です。

おすすめの書き進め方

一度にすべてを書こうとせず、以下のペースで進めると挫折しにくいです。

  • 1週目: 項目1〜2(基本情報、連絡先)
  • 2〜3週目: 項目3〜5(金融、保険、不動産)
  • 4週目: 項目6(デジタル資産)
  • 5〜6週目: 項目7〜8(医療・介護の希望)
  • 7〜8週目: 項目9(葬儀・墓)
  • 9〜10週目: 項目10(家族へのメッセージ)

約2〜3ヶ月で完成します。完成後は年1回の見直しを。誕生日や正月など、毎年決まった日に開く習慣をつけると続きます。

ケーススタディ

ケース1: エンディングノートで家族の迷いを消したMさん

Mさん(78歳・女性)は、夫の急逝で銀行口座や保険の所在が分からず大変苦労した経験から、自分は絶対にエンディングノートを完成させると決意。2年かけて10項目を丁寧に書き上げ、娘に保管場所を伝えました。Mさんが亡くなった後、娘は「母の字で全部書いてあったおかげで、一度も迷わずに手続きできた。母からの最後のプレゼントだった」と感謝しています。

ケース2: 入居を機にエンディングノートを書き始めたNさん

Nさん(72歳・男性)は、サ高住への入居を機に終活を開始。エンディングノートを入居初月に購入し、毎週末1項目ずつ埋める習慣を作りました。施設のスタッフも「書いたノートは職員にも見せてくださいね」と声掛けしてくれ、医療の希望や家族連絡先を共有。体調急変時にもスムーズに対応できる体制が整いました。

書くときに避けるべき3つの落とし穴

落とし穴1: 暗証番号やパスワードをノート本体に書く

紛失・盗難のリスクがあります。IDとパスワードは別管理が鉄則です。

落とし穴2: 家族に保管場所を伝え忘れる

完璧に書いたノートも、家族が見つけられなければ意味がありません。書き始めた直後に「書き始めたから、何かあったら○○を見て」と伝えてください。

落とし穴3: 一度書いて放置する

財産状況、契約関係、家族構成は毎年変化します。年1回の更新を習慣化してください。

まとめ: 書くのは「自分のため」でもある

エンディングノートは家族への贈り物であると同時に、自分の人生を整理する作業でもあります。10項目を書き進める過程で、自分の財産状況、家族関係、これからの希望が明確になり、老後の不安が驚くほど減ります。

「迷惑をかけたくない」という気持ちがある方は、今日から第1項目を書き始めてみませんか。大切な家族のために書いたノートは、書いた本人にも静かな安心をもたらしてくれます。

遺言書や任意後見契約の検討は、弁護士・司法書士・行政書士など専門家にご相談ください。

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