老人ホーム費用が払えないときの対処法|減免制度・生活保護・家族負担の全選択肢
「老人ホームに入れたいけど、お金が足りない」「入居させたものの、月20万円を払い続けられるか不安」——この悩みは、決してあなたの家族だけのものではありません。厚生労働省の調査では、要介護認定者の世帯の約3割が「介護費用の支払いに困難を感じている」と回答しています。
多くの比較サイトは広告主に配慮して、生活保護や世帯分離といった「現実的な最後の選択肢」に踏み込みません。ケアナギは違います。本記事では、お金が足りないときに使える全選択肢を、優先順位付きで整理します。諦める前に、必ず最後まで読んでください。
最初に押さえる|費用を下げる制度は「申請しないと使えない」
介護保険や医療保険の減免制度は、ほぼすべて申請主義です。条件を満たしていても、家族が知らなければ1円も減りません。使える可能性が高い制度から順に整理します。
| 制度名 | 対象 | 軽減効果の目安 |
|---|---|---|
| [高額介護サービス費](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html) | 介護保険利用者全員 | 月の自己負担が44,400円(一般世帯)を超えた分を還付 |
| 特定入所者介護サービス費([補足給付](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html)) | 特養・老健・ショート利用の低所得者 | 居住費・食費を月2〜10万円軽減 |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 医療+介護利用世帯 | 年間で数万〜十数万円還付 |
| 社会福祉法人等による利用者負担軽減 | 一定の低所得世帯 | 介護サービス費・食費・居住費を25%軽減 |
| 生活保護 | 資産・収入が基準以下 | 介護扶助で自己負担ゼロ、居住費も住宅扶助 |
| 世帯分離 | 同居家族の所得で負担が上がっている世帯 | 親を別世帯にして上限額を下げる |
以下、それぞれの使い方を具体的に解説します。
選択肢1|高額介護サービス費で月の上限を44,400円に
介護保険の自己負担には、世帯ごとに月の上限があります。一般的な住民税課税世帯(年収約770万円未満)なら月44,400円が上限です。これを超えた分は市区町村から還付されます。
- 生活保護受給者・老齢福祉年金受給者:月15,000円
- 世帯全員が住民税非課税で年金収入80万円以下:月24,600円
- 世帯全員が住民税非課税:月24,600円
- 一般(住民税課税):月44,400円
- 現役並み所得(年収約770万円以上):月44,400〜140,100円
初回だけ市区町村に申請が必要で、以降は自動で振り込まれる自治体が多数です。「申請書が届いた記憶がない」という方は、介護保険課に直接問い合わせてください。2年以内なら遡って請求できます。
選択肢2|特定入所者介護サービス費(補足給付)で居住費・食費を削る
これは特養・老健・介護医療院・ショートステイ利用者限定の制度ですが、効果が非常に大きいです。申請すると居住費と食費が大幅に軽減されます。
所得段階別の1日あたり負担限度額(2026年基準)は以下です。
- 第1段階(生活保護受給者など):食費300円・居住費0円(多床室)
- 第2段階(住民税非課税・年金80万円以下):食費390円・居住費370円
- 第3段階①(住民税非課税・年金80〜120万円):食費650円・居住費370円
- 第3段階②(住民税非課税・年金120万円超):食費1,360円・居住費370円
- 第4段階(それ以外):軽減対象外
第2段階の方なら、居住費・食費だけで月5〜7万円軽減されることがあります。預貯金要件(単身500万円以下、夫婦1,500万円以下など)もあるため、貯蓄状況と合わせて市区町村に確認してください。
選択肢3|世帯分離で上限額を下げる
親と子が同じ住民票にあると、世帯の所得が合算され、高額介護サービス費や補足給付の上限額が不利になる場合があります。世帯分離すれば、親だけの所得で判定されるため、低所得区分に該当しやすくなります。
世帯分離の手続きは、市区町村の窓口で住民票の世帯変更届を出すだけ。生計が別であれば可能です。ただし、次の点に注意してください。
- 国民健康保険料が上がる場合がある(別世帯になることで保険料算定が変わる)
- 親が子の扶養に入っている場合、税制上の影響を税理士に確認
- 「介護のため」と言えば役所は拒否できないが、目的を明確に
世帯分離で月の自己負担が2〜5万円下がるケースは珍しくありません。ケアマネジャーか地域包括支援センターで試算してもらってください。
選択肢4|生活保護受給者でも入れる施設がある
「生活保護になったら老人ホームに入れない」は大きな誤解です。生活保護受給者を積極的に受け入れる施設は全国にあり、むしろ安定収入として歓迎する施設もあります。
入れる施設タイプは以下です。
- 特別養護老人ホーム:補足給付と介護扶助で自己負担ほぼゼロ
- 介護老人保健施設:特養と同様
- 養護老人ホーム:そもそも低所得者向けの措置施設
- 生活保護対応の有料老人ホーム・サ高住:住宅扶助の範囲内で運営
- 無料低額宿泊所:自治体によっては介護対応型あり
住宅扶助の上限は自治体ごとに異なりますが、単身世帯で月4〜5万円程度が多く、この範囲内で運営する施設が生活保護対応と呼ばれます。「親の年金だけでは足りない、子も払えない」状況なら、福祉事務所で生活保護の相談をためらう必要はありません。親を守るための正当な制度です。
選択肢5|家族間で費用を分担する
兄弟姉妹で分担するときの現実的な方法は3パターンです。
- 均等分担:人数で割る。シンプルだが、経済状況の差で不公平感が生じやすい
- 応能負担:収入や資産に応じて比率を決める。納得感があるが事前の話し合い必須
- 時間と金銭の交換:遠方の兄弟が金銭、近場が訪問・面会担当
親の資産(年金・預貯金・不動産)をまず使い切る方針と、兄弟で補てんする方針の順番を決めるだけで、揉め事の8割は防げます。詳しくは兄弟で介護費用を揉めずに分担する方法の記事も合わせてご覧ください。
選択肢6|親の資産を活用する(売却・リバースモーゲージ・家族信託)
親名義の資産がある場合、以下を検討できます。
- 自宅売却:施設入居で自宅が空き家になるなら売却して入居資金化。譲渡益課税・3,000万円特別控除の適用を税理士に確認
- リバースモーゲージ:自宅を担保に生活資金を借りる。死後に自宅売却で返済。東京スター銀行やゆうちょ銀行などが提供
- 不動産担保ローン:相続人の同意があれば可能
- 家族信託:認知症進行前に家族が財産管理できる仕組み。司法書士・弁護士で30〜100万円
判断能力があるうちに手を打つのがポイントです。認知症が進行してからでは売却も借入もできず、成年後見制度に頼るしかなくなります(家庭裁判所選任で時間と費用がかかる)。
選択肢7|社会福祉協議会・地域の福祉制度
意外と知られていない「自治体独自の軽減策」があります。
- 社会福祉協議会の生活福祉資金貸付:低所得世帯向けの低利融資
- 市区町村の利用者負担軽減事業:特養や訪問介護の食費・居住費をさらに軽減
- 日本赤十字・共同募金会の一時金:災害・疾病時の緊急支援
- 社会福祉法人の独自軽減:運営施設で自主的に実施されている割引
地域包括支援センターか市区町村の福祉課で「使える制度を全部教えてください」と聞くのが最短です。
よくある質問
Q. 親の年金が少なく、子も余裕がない。どこから相談すれば?
A. まず地域包括支援センターに行ってください。無料で、制度の棚卸しと申請の伴走をしてくれます。ケアマネがついていれば同席してもらうとスムーズです。
Q. 生活保護を受けると、子どもの扶養義務で資産調査されますか?
A. 福祉事務所は子に「扶養照会」を行いますが、扶養は強制ではありません。「経済的に困難」と回答すれば、基本的にそれ以上踏み込まれません。2021年以降、厚労省も扶養照会の柔軟運用を通知しています。
Q. 貯蓄がゼロでも入れる特養はありますか?
A. あります。特養は本来、所得の低い方が入居する公的施設です。補足給付と高額介護サービス費で、月の自己負担は1〜3万円程度に抑えられます。年金だけで支払えるケースが大半です。
まとめ|最後まで諦めない
老人ホームの費用問題は、「お金がない=施設に入れない」ではありません。高額介護サービス費・補足給付・世帯分離・生活保護・家族分担・資産活用という6段階の選択肢があり、組み合わせればほとんどの家庭は何らかの解にたどり着けます。
一人で抱え込まず、地域包括支援センター・ケアマネ・福祉事務所・社会福祉協議会を味方につけてください。費用で諦めそうになっている家族こそ、最初に相談してほしい窓口があります。
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